保科 篤子

Atsuko Hoshina

 何やら不思議な色調と高いコントラストの写真で始まる写真集。
自宅を撮っているものの、そこには家族や自分など人の姿はない。あるのは人が住んでいた(住んでいる)気配だけ。それを不思議なカラープリントでまとめているため、なんだか生活の気配はするもののまるで廃虚か何かの犯行現場のような不思議な空気感が漂う。撮り方と見せ方によって普段の生活の場がこんなにも違って見えるものかと驚く。
本人に聞くとフィルム現像に事故があり、それを承知でプリントするとこのようになったという。しかし失敗と諦めずに、その独特のプリントが妙にマッチするため採用したそうだ。偶然とはいえ、もしこのカラープリントを意図的に毎回作れれば一つの手段として十分効果的なものとなるだろう。(記 奥勝浩)


return