台所にて

 こんな夜中に帰ってきて、さっさと寝ればいいものを、 今、私は台所で考えこんでいる。 "一平ちゃん・夜店の焼そば" と "マルチャン・肉入りワンタン麺"とのあいだで。

 1時をまわって帰宅して、冷蔵庫を覗くと、そこにはおよそ主食となるものはなかった。 先日、中を掃除するべく、手当りしだいに捨てたことを忘れていた。
帰宅するやいなや、猫と遊び、服を着替え、ビールをあけて、BambooNetにアクセスして すっかり時間がたってしまった私には、もはや外に食事をするだけの気力はない。
でも、お腹はへった。 "ワンタン"という肉太のカタカナは、ちょっとオヤジの気配で、この時間には悲しい。
でも、この寒い日にスープのない"焼そば"は、暖まりそうもない。 猫を足であしらいながら立つ台所の床は冷たいし、猫の爪もいたい。 早く何か暖かいものが欲しい。

 こんなことなら何か食べてくればよかった。後悔先にも後にもたたず。 とりあえず、お湯を沸かそう。今朝煎れたコーヒーもまだある、暖めよう。 コーヒーカップを手に持つと、その暖かさは嬉しい。
「手のひらの血管が暖まり、その暖かくなった血液が体内をめぐり・・」という理屈はおいといて、 まるで、寒い日に家族と住んでいた家に戻った時の安堵感に似ている、手首から先だけ。

 今日、同席した女性は、ミニスカートから伸びた足は奇麗だったけれど、ニンニクのにおいがした。 きっと何かおいしいもの食べたんだろうな、そんなことを思うと、なんだか悲しくなってきた。 どうして私は今、こんな時間に、ワンタン麺と焼そばとで悩んでいるんだろう・・・。

 暖めた2杯目のコーヒーを飲み終えて、こうやってキーボードを叩いていると、 なんだか目も覚めてきた。猫は私の後ろを走り回っている。
こうして私は今夜も眠れない。

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