コスモス

 先日、コスモスを見に&撮影にいっていました。
ところは飯塚の市街地を流れる河原へと。 車で河原まで降りていくと
「中の島コスモス園」とありました。 どうやら近くの婦人会の方々の
努力でこうして名所にまでなったのでしょう。

 途中、蛇と遭遇しました。 「向こうにいってくれ」と懇願したつもりだったの
ですが、どうやら誤解が生じたらしく、彼はぼくに向かって突進してきました。
このときほどアシスタントを連れてこなかったことを悔やんだことはありません。
おだやかな日差しをあびながら、コスモス畑の中を逃げ惑いました。

 室内で花を撮ることは、以前からよくやっていましたが、
こうして屋外で咲いている花を本気で撮るのは、実ははじめてだったのです。
最初は花の「華」が見えずに、群れ咲く集団として撮っていたのですが、
2本目を撮り終わるころになってやっとその「華」が見えてきました。
陽はすこし傾き花びらには裏側から光があたり、花びらそのものが
光を発しているかのようでした。

 帰ろうとして振り向き車へと歩を進めると、遠くに歳老いたご夫婦の姿が。
陽傘をさされた歳老いた妻をコスモスの脇に座らせ、それをカメラにおさめるご主人。
なんでもない光景なのですが、とても大切なお二人の儀式のように見え、
しばらく見入ってしまいました。
 あの写真はいずれ一枚数十円のプリントでアルバムへとおさめられるのでしょう
けれども、やがて時間がたつと「ここに写っているのは、おばあちゃん」
そして画面には写っていないけれども「このときここにいて、この写真を撮ったのが
おじいちゃん」として、「写った人」、「写した人」の関係が、お二人が
こうして仲睦まじく生きていた証として残っていくものなんだろうなぁと
一枚の写真の価値を考え、なかば憧れの目でそんなお二人を見つめていました。

 車へと戻り機材も片付けたのですが、風と陽差しが心地よく、
ドアを開けたまましばらくぼーっとまだ眺めていました。
こんなに長時間、花を見ているなんてことはありませんでした。
昨日までのイライラがすぅっと退いていくのがわかりました。
 歳老いたご夫婦の姿に妙な感動と憧れを覚えたり、なんだかとても
おだやかな気持ちになれたのは、きっと「花」のせい。

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